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朝日新聞 1998年11月

カンボジアの心と技 よみがえれ絹絣  内戦で消滅寸前

元友禅職人が京都で作品展

長引いた内戦で姿を消しつつあったカンボジアの伝統的な絹絣を復興したカンボジア在住の元友禅職人・森本喜久男さん(50)の作品展「カンボジア・心と技の染織展」が19日、故郷の京都・法然院(京郡市左京区)で始まった。熱帯種の蚕から採った黄金色の生糸を使い、木の皮やカイガラムシの巣などから採った天然染料で染めて織る。森本さんは「精密で優美な織物は、アジアの交差点だったカンボジア文化の結晶。多くの人に見てほしい」と話している。

 カンボジアの絹絣は、1970年代にポル・ボト政権が黒の着衣を強制したことや、人々が飢えで蚕を食べ尽くしたために急速に失われつつあったといわれている。森本さんは1983年からタイに住み、京都で身につけた染めの技術を現地の工科大学などで伝えていた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の委嘱で力ンボジアの地方の村々を歩いた95年、かつての技術を知る年配の織り手がまだいることを知り、「もう一度織りませんか」と呼びかけた。同年7月には、カンポット州タコー村でクワの木を栽培し、養蚕を始めた。

かつて二百種以上あった図案のうち残っていたのは四、五十種ほど。高級品の一部は、欧米の博物館や個人のコレクションに残るだけだ。森本さんは美術館などを訪ね歩いたり、老人の記憶を頼りに伝統的な図案を次々に復刻。織り手も約60人が集まった。来年春には百種類を収めた図案集を刊行する予定だ。染織展には、こうして織った絹緋のスカートやショールなど約五十点を展示する。作品は即売し、収益を活動資金に充てる。23日まで。