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【連載】「カンボジア漂流記」第12回 斎藤雅之
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まだ薄暗い中、ゲストハウスを後にした我々はクラッチェへ向かう船に乗るために
船着場へ行った。帰省ラッシュもいよいよ本番のようで朝6時過ぎというのに船着場
はものすごい人の数で溢れかえっていた。チケットを買って、朝飯用のパンを持って
いざ乗船。
しかし一つトラブルが・・・。チケットに座席番号が記載されていないのである。
どうやらあまりに乗る人が多いために座席からあぶれてしまったようだ。仕方なしに
我々は船の屋根に座る事になった。ただでさえ嫌いな船旅なのに、よりによって屋根
の上に戦地からの帰還兵のようにゴチャついた中に陣取る事になるとは・・・。
そうこうしている間に船は出港した。例によって我々の救命胴着などは存在しない。
いつ沈むか分からないようなボロ船の屋根の上でパンをかじりながらまたまた不安に
なっている私がいた。出港当時は朝一で涼しい風を受けて割と爽快であったが、8時
を過ぎた頃には猛烈な直射日光が容赦なく我々を襲った。
30度をゆうに超える気温でこの直射日光・・・たまらない・・・。しかも私が座
っていた場所の真下にエンジンがあるようで、その熱が鉄板の屋根を通して私の尻に
伝わってくる・・・。上も下もどこもかも暑い・・・。
いっぺんにブルーになってしまった。ちらりと横を見ると高橋さんと日本人女性の
Aさんはひっくり返って寝ている。信じられんよまったくもう・・・。私は何もする
ことなく、ただ黙ってこの灼熱地獄に耐えているのが精一杯だった。
船はメコン川を上流に向かってゆっくり進んでいく。思っていたよりもずっと奇麗
な川だ。透明な緑色といった感じだ。その川に、屋根の上に座っているカンボジア人
は当たり前の様にポイポイゴミを捨てている。カンボジアのゴミ問題はほんとになん
とかしてもらいたいものだ。
我慢すること約5時間、船はやっと目的地のクラッチェに到着した。私は一目散に
船から飛び降りた。暑さと酔いで限界だったからだ。ふ〜っと深呼吸をしていたら船
着場の前にある階段の上に見たことのある顔が・・・。お父さんの長男で通称「兄貴」
だ。どうやら迎えにきてくれたらしい。兄貴のバイクのケツに乗っていざお父さんの
家へ。ここクラッチェも道がきれいで、全面アスファルトだった。バイクで走ってす
ぐのところにお父さんの家はあった。
着いたらお父さんとお母さん、先に来ていたCCHOMEのマイ、アキ姉妹、なぜ
かついてきたCCHOMEの向かいの子ソーライ、赤ちゃんのスレイリアップ、そし
てペアさんを除いた兄貴達7人兄弟が私達を歓迎してくれた。実にホッとした。ポイ
ペットにいるときと変わらない空気がそこにはあった。着いてすぐにロム君に酒を勧
められた。さすがに正月、ロム君も昼間から酒を飲んでいるようだ。それにしても人
間のやたら多い家だ。兄弟7人だけでも十分なのに、彼らのいとこ達まで集結してい
た。我々も入れたら20人近くいるのではなかろうか?当然我々の寝るスペースは無
く、すぐ近くにあるホテルに泊まる事になった。
昼飯を食べてから私は家の目の前に流れるメコン川に泳ぎに行った。と言うよりも、
泳いで遊んでいたマイに挑発されて泳ぐことになってしまったと言うほうが正しいか
・・・。先述した通りきれいな川なのでなんの抵抗もなしに私は飛び込んだ。灼熱地
獄で燃え上がった体温を下げるにもちょうどよかったのか実に気持ちがいい。泳いだ
のなんていつ以来か?川で泳ぐなんて初めてだ。2,3メートル沖に歩いたらもう足
がつかない。そんな川を小さな子ども達が平気で泳いでいる。みんな泳ぐのがうまい。
水の無いポイペットでは考えられないことだ。私も夢中になって遊んだ。
つながれている船の上から5メートル下の水面にむかってムーンサルトなどやって
腹をまともに打って悶絶もした。2時間ずっと水の中にいて、最後には川でシャンプ
ーを使って髪を洗った。今日一日ですっかり真っ黒になってしまった私は、夕食後ホ
テルでぶっ倒れるように眠った。
体も精神もボロボロに疲れたが、日本では絶対に体験できない貴重な思い出となる
一日だった。
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