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 【連載】「カンボジア漂流記」第13回  斎藤雅之
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 カンボジア人はもの凄い信仰熱心である。なにか行事があればすぐに寺に行くし、
家の人間が病気になったら坊主を呼んできてお払いをしてもらったりと寺との関係が
とても密接である。事実ポイペットには村1つに寺1つといったかんじでたくさんの
寺が存在している。もっともポイペットにある寺ははっきりいって野ざらし小屋みた
いなものである。日本の寺を連想する人にはちょっと想像がつかないかもしれないが
・・・。
 お父さん家族も例外になく信仰心が強く、クラッチェにいる間にたくさんの寺に連
れていかれた。私から言わせればどれも一緒に見えるのだが、そう言うとお母さんが
待ってましたと言わんばかりに講釈を始める。歴史やらなにやら・・・クメール語で
言われるから全く理解できないし、全く宗教に関心の無い私の耳は日本語でも受け流
していたかも・・・。
 ロム君にも毎夜寺に連れて行かれた。まあ正月だから初詣みたいなもんかと思って
ついていくのだが、やってることはポイペットの寺の祭りと一緒。馬鹿でかいスピー
カーから流れてくるカンボジアのポップス?に合わせて体をクネクネさせたり、ちょ
っとハイテンポな曲だと飛び跳ねたりとただ踊るだけである。ただ様子がいつもと違
い、女性が参加しているのが目につく。カンボジアではカップルが手をつないで歩く
事は勿論、道端で男女2人で話しているのを見かけることすらほとんどない。そうい
う風習のようだ。正月はその風習がなくなり、男女が一緒に遊べる唯一のチャンスら
しい。ロム君も「一緒に踊って結婚相手を探す。」と本気か冗談かわからない発言を
していた。とは言うものの普段交わる事がないからか、やはり女性は恥ずかしいらし
くなかなか輪の中に入ろうとしないのがとても青臭さを感じさせてくれておもしろか
った。
 いつ年が明けたのかはっきりとはわからなかったが、とりあえず新年を迎えたらし
いその日の朝、我々日本人とお父さん家族皆揃って川イルカを見に行った。川イルカ
は今ではメコン川のわずか一部の地域と中国にしかいない貴重な動物らしい。メコン
の川イルカに限っては100頭を切っているとも言われ、絶滅が心配されている。例
によって怪しげな寺に行った後、川をさかのぼっていざ生息スポットへ、行くかと思
ったら浅瀬で皆で水遊びをすることに。服を着たままザブン!と川に入ってまたして
もはしゃいで遊んでしまった。その後ビショ濡れのまま車に乗って今度こそ川イルカ
を見に行った。
 その場にはたくさんの人が訪れており、20メートル下を流れるメコン川を双眼鏡
で凝視していた。こんなに遠くから見る事になるとはと少々驚いたが、肉眼で発見す
るために私も川に集中した。とそのとき水面にネッシーのような背中部分を発見!
 ほんとに背中だけで顔などは全くわからなかったが間違いない。川イルカである。
皆背中が見えるたびに歓声をあげていた。それほど今では見る事が難しくなってしま
ったということなのだろう。未確認の恐竜を発見したような変な充実感を得て、濡れ
たままの体をまた車に押し込んだ。
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