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●○●第4話:シアムリアップでの1日●○●

 10月21日、この日はシアムリアップへ1泊の予定で出かけた。たまたま日曜日で仕事もなかったので、カンボジア人スタッフの人たちも一緒に5人で車に乗り込み、シアムリアップへ向かった。シアムリアップは、皆さんご存知の通り、あの有名なアンコールワット等の遺跡群がある地である。もちろん、私もアンコールワットを訪れたが、それ以上に心を動かされるものがシアムリアップにはたくさんある。
 ポイペットから1時間くらい車を走らせた頃だろうか、そこにはポイペットの村とは全くの別世界が広がっていた。第2話でお話しした通り、ポイペットには川や湖はほとんど見られない。しかし、道の両脇には水が満ち溢れていた。橋のたもとでは、子どもたちが水遊びをしていた。ここに少し車を止め、ほてったエンジンを冷やした。
 また車を走らせ、お昼過ぎにはシアムリアップへ到着した。ここもポイペットとは同じ国の中とは思えないほど違う様相をしていた。観光の町ということもあり、人、車が大変多い。アンコールワット等観光地には、日本語を流暢に話す子どもたちがお土産を持って客を待っている。私たちが訪れたときも、我先にと、子どもたちが次々と話しかけてきた。この町と子どもたちのエネルギーに圧倒された。
 昼食を取り、早速、楽しみにしていた目的地へと向かった。「クメール伝統織物研究所」だ。もともと友禅の職人だった森本さんが、現在、ここシアムリアップでクメール絣の復興活動を行っている。私は昨年、京都の展示会を少し手伝わせてもらい、そのときにお話しを聞き、少し興味を持っていた。特に織物の知識があるわけではないので、話を聞くまでは何が他の織物と違うのか、全く分かっていなかった。しかし、染め材には全て天然のものを使用していることや、長い内戦で衰退した染織技術を今の世代に伝えていくことの難しさなど、お話しを聞いているうちにどんどん興味がわいてきたのだった。そして、ぜひカンボジアを訪れた際には、「クメール伝統織物研究所」を訪問したいと思っていた。     
 「クメール伝統織物研究所」へ到着すると、1階の作業場の奥から、早速森本さんが出迎えてくれた。1階には、織り機などがところ狭しと並んでおり、染め材なども奥に見える。ここで色を煮出すようだ。この日は日曜日だったため、職人さんたちはいなかったので作業をしている所を見ることが出来なかったのが残念だった。職人さんは皆カンボジア人で、先生役のおばあさんが2人、ベテランの女性(私の母親と同じ位の年齢だろうか)が3名くらい、そして残りの十数人は10代後半〜20代前半くらいの女の子たちということだ。
 森本さんに2階へも案内してもらった。そこにはおしゃれな展示場があった。染め材にはどのようなものが使われているのか、織り機の部品にはどのようなものがあるのか、が詳しくここでわかる。一般の人では買えないような貴重な織物も展示してあるが、私でも手軽に買えるハンカチなどの商品も売ってある。日本円にして500円くらいだったと記憶しているが、このハンカチ1枚をつくる行程をきくと、こんなに安くていいのだろうか、と思う。まず、様々な染め材を使って、黄金の繭から紡いだ糸を染める。例えば、ココナッツの皮からきれいな茶色、ライチの木から濃いグレー、プロフーの木から黄緑色に染まる。そして、その糸を織っていくのだが、これがまた気の遠くなるほど時間がかかる。1日で約10センチしか進まないそうだ。ハンカチとはいえ、40センチくらいあるので、1枚織るだけで4日はかかることになる。
 しかし、これだけこだわっていると、職人さんたちの思い入れもすごいようだ。「職人の子達はみんな、お客さんが来て商品を買ってくれると、誰がつくった商品を買ってくれたのかすぐに聞いてくるんだよ。お客さんの中にも、自分が買った商品をつくってくれた子と写真を撮って帰る人が結構いるんだよ。」これを聞いて、お互いの顔が見える、そういう関係ってすごくいいな、と思った。ただ手当たりしだいに有名なお土産(実は他国で大量生産されたものかもしれないもの)を買うより、現地の人の心のこもった商品を買いたいものである。
 この場を借りてちょっとお知らせをさせてもらうと、今回私の行ってきた「クメール伝統織物研究所」を訪問するツアーは、NPO法人アジア太平洋農耕文化の会が企画して、来年の1、3、5月に予定されています。ただ見るだけでなく、織物を体験したり、研究所のスタッフが生まれ育った村を訪問するなど、とても濃い内容になっています。
(詳しくはホームページをご覧ください。)
http://www.asahi-net.or.jp/~UD4K-YMD/morimoto.html
少しでも興味を持っていただけたなら、行ってみて損はないと思います。